「もう、真面目に生きるのやめようかな」
深夜のコンビニの駐車場。車の窓に映った自分の顔を見ながら、僕はぼんやりそんなことを考えていた。
仕事は要領が悪い。上司にも後輩にもナメられる。女性社員には半笑いで見られる。恋愛もうまくいかない。
頑張ってるつもりなのに、空回りしてる感だけがどんどん強くなっていった。その頃の僕は、「優しい男」でいようとしていた。
でも現実は、優しいというより、“舐められてるだけ”だった。だから僕は、急におかしな方向へ走り始めた。
まず車を変えた。黒のチェイサー(当時の僕が考える「悪そうな男の象徴」だった)。少し車高を落とした、いかついセダンだった。会社に乗っていくと、周りの反応が少し変わる。それだけで、なんだか自分が強くなった気がした。
髪も茶色く染めた。鏡の前で顎を引いて、悪そうな顔の練習までしていた。今思えば、かなり痛い。でも当時の僕は本気だった。
夜になると、部屋で筋トレも始めた。
腕立て。
腹筋。
そしてシャドーボクシング。
鏡の前で、茶髪の自分に向かって拳を振る。強そうな上司を想定してハイキックの練習していた。本気で、(いつ喧嘩になっても大丈夫なように)とか考えていた。
完全にメンズエッグ(当時流行っていた、ヤンキー系ファッション雑誌)の見すぎだったと思う。そんなある日。コンビニへ立ち寄った。入り口には、地元のヤンキーっぽい男たちが数人たむろしていた。
昔の僕なら、絶対に避けて通っていたと思う。でも、その頃の僕は違った。
黒チェイサー。茶髪。毎晩シャドーボクシング。謎の自信だけはあった。僕はそのまま真っ直ぐ歩いていって、低い声で言った。
「……邪魔だから、どいて」
ヤンキーたちが、一瞬だけこっちを見る。横を見ると、コンビニに入ろうとしていた女性がビビっていた。でもその瞬間。
(あ、今の俺ちょっと強そうかも)と、本気で思ってしまった。
今思えば、完全におかしくなり始めていた。
――そんな頃に出会ったのが、42人目の女性だった。待ち合わせ場所は梅田。彼女は看護師だった。
小柄で、肩までのボブ。そして、びっくりするくらい短いミニスカートだった。
「こんばんは」僕は少し斜に構えながら話しかけた。でも彼女は、僕を見たあと何も言わず、そのままスタスタ歩き始めた。
横断歩道を、どんどん進んでいく。
(え……?)(俺、今嫌われた?)
田舎から何時間もかけて来ている。このまま帰るわけにはいかない。僕は、ミニスカートの後ろ姿を必死で追いかけた。(後編へ続く)
💡 今日のまふぇっと教訓
👉 ナメられたくない男ほど、まず「見た目の武装」から始める。
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💡42人目の看護師さんとの出会いはマッチングアプリでした。恋愛はうまくいかなくても、出会いの数だけは確実に増えます。

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