【78人目|復讐編】3回断っても「しようよ」――俺様理論がハマった夜

恋愛遍歴

マッチングアプリで出会った78人目の女性は、数歳年上の女性だった。黒髪のロングヘア。

小柄で、落ち着いた雰囲気。一見すると、どこかのコンサルタントや講師でもやっていそうな、真面目で知性的な顔立ちをしていた。

かつての僕なら、年上で隙のなさそうな彼女を見て、「俺なんか、相手にされないんじゃないか」と気後れしていたかもしれない。

だが、今の僕は違った。10連敗を経て構築した、「攻撃型ロボット・俺様」その思考が、すでに自分の中に組み込まれていた。

相手に媚びない。嫌われることを恐れない。そして、自分から選ぶ。それが、この頃の俺様理論(7つのルール)だった。

居酒屋での仕込み

初回デートは居酒屋だった。僕はいつものように、事前に用意していた3つのトークネタを会話の中に散りばめた。

仕事の話。趣味の話。そして、少し笑える話。

一方的に喋るのではなく、相手の反応を見ながら話題を動かしていく。1時間。2時間。気がつけば、かなり長い時間話していた。

僕は手応えを感じていた。そして、飲み終わったところで、「じゃあ、今日はこれで。」そう言って、僕はスマートに帰ろうとした。

そのときだった。彼女が言った。「このあと、ホテル行かない?」一瞬、耳を疑った。彼女のほうから誘ってきた。

かつての僕なら、大喜びしていただろう。「もちろん!」そう言って、すぐについて行っていたはずだ。

でも、今の僕には「俺様理論」があった。そこで僕は、あえて断った。「いや、今日初めてだし。やめとこうよ。」「え、しようよ」

普通なら、ここで終わると思っていた。ところが彼女は、あっさり言った。「え、しようよ。」僕は少し驚いた。

でも、もう一度断った。「いや、本当に今日は初めてだからさ。」すると彼女は、また言った。「え、しようよ。」

さらに僕は断った。「いやいや、今日はやめとこう。」それでも彼女は引かなかった。「行こうよ。」

3回。僕は断った。それでも彼女は誘ってきた。その瞬間、僕の中で何かが変わった。

(……俺を追ってる?)それまでの恋愛では、いつも僕が追う側だった。好きになった。会いたいと思った。嫌われたくなかった。だから、相手の顔色を見ていた。

でも、この日は違った。彼女が誘っている。僕が断っている。そして、彼女がもう一度誘っている。

その構図が、当時の僕にはたまらなく心地よかった。「……そこまで言うなら、行くか。」

僕は、少し重い腰を上げるような演技をして、彼女の誘いに応じた。

「俺様理論、やっぱり正しいのか?」

ホテルに入ると、彼女はさらに意外な一面を見せた。居酒屋では知的で落ち着いていた彼女が、ベッドの上ではかなり積極的だった。

そのギャップに、以前の僕なら舞い上がっていたと思う。でも、このときの僕は違った。「俺は冷静だ。」そう自分に言い聞かせていた。

そして頭の中では、別のことを考えていた。

(俺様理論、やっぱり正しいんじゃないか?)

(すぐに飛びつかない。)

(自分から追わない。)

(相手に追わせる。)

10連敗して、散々振られてきた男が作った理論。それが、この日はうまく機能したように見えた。

少なくとも、僕にはそう見えた。

でも、本当に「支配」だったのか?

当時の僕は、この出来事を完全に「成功」と捉えていた。

3回断った。それでも彼女は誘ってきた。だから、「俺の価値が上がったんだ。」そう考えた。

そして、「女性は、簡単に手に入らない男を追う。」そんな自分なりの恋愛法則を、さらに確信していった。

でも、今の僕なら少し違う見方をする。彼女がなぜ3回も誘ってきたのか。本当に僕が「追わせた」からなのか。

単純に彼女自身がその夜、そういう気分だっただけなのか。あるいは、僕に興味を持ってくれていたからなのか。それは、今となっては分からない。

当時の僕は、その理由を一つに決めつけた。「俺様だから、彼女は俺を追った。」そう考えた。そして、それがまた新しい自信になった。

78人目は、少し違った

普通なら、このまま一度きりで終わってもおかしくなかった。ところが、この女性とは、その後も関係が続いていくことになる。

一度きりの相手ではなかった。かといって、恋人と呼べるような関係でもない。

会ったり、離れたり。近づいたり、離れたり。なんとも説明しにくい、不思議な関係になっていった。

その意味でも、78人目は僕にとって少し特殊な女性だった。そして僕は、そこでも都合よく自分の理論を解釈した。

(ほら、やっぱりそうだ。)(追わせたほうが、女は離れない。)(俺はもう、昔の僕じゃない。)そんなふうに。

今思えば、かなり単純だった。一つの出来事がうまくいった。だから、その方法が正しいと思い込んだ。

人間は、自分に都合のいい成功体験を見つけると、それを「法則」にしたくなる。

当時の僕も、まさにそうだった。ロボット・マフェットは、少しずつ自信を持ち始めた77人目では、200円のマシュマロを渡して女性を怒らせた。そして78人目では、女性からホテルに誘われても3回断った。

結果だけを見れば、まるで正反対の話だ。でも、僕の中では一本につながっていた。「もう、媚びなくていい。」それが、俺様理論の根っこだった。

振られてもいい。嫌われてもいい。すぐに飛びつかなくてもいい。相手に選ばれることだけを考えなくてもいい。

10連敗する前の僕は、そんなことを考える余裕すらなかった。だから、この78人目との出来事は、当時の僕にとって大きな成功体験になった。「俺様でいける。」そう思った。

そして、この成功体験が、さらに僕を「俺様」の方向へ押し進めていく。

三連勝。そして、調子に乗った

66人目。77人目。78人目。気がつけば、俺は連勝していた。10連敗でどん底まで落ちた男が、今度は女性との関係を次々と成立させている。

「やっぱり、俺様理論は正しい。」俺は完全に調子に乗った。自分が恋愛を完全に攻略したような気分になっていた。

……もちろん、そんなに甘くはなかった。三連勝のあと、俺を待っていたのは――三連敗。人生、そんなに簡単にはいかない。ここからまた、俺様理論が試されることになる。

――次回、三連敗編。

【今日のまふぇっと教訓】

追うばかりが恋愛じゃない。たまには引いて、相手に追わせてみる。

ただし――調子に乗ると、すぐに痛い目を見る。

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