ゆみと付き合い始めてから、気づけば僕は彼女の部屋にいる時間が増えていた。いつの間にか半同棲みたいな生活になっていた。
派手なデートは、あまりしない。家でテレビを見て。お腹が空いたらご飯を食べて。食後には二人でタバコを吸う。
マイルドセブン。
付き合うきっかけになったあのタバコは、付き合ってからも二人の定番だった。今思えば、部屋の中はかなり煙たかったと思う。
ある日、ゆみが一冊の本を持ってきた。
「タバコやめへん?」『禁煙セラピー』という本だった。
「これ読んだら、本当にやめられるらしいよ。」
半信半疑だったけど、二人で挑戦してみることにした。結果は、見事に分かれた。
ゆみは最後まで読んで、本当に禁煙した。僕は一ページ読んで閉じた。
「……無理。」
あっさり挫折である。ちなみに僕が禁煙したのは、もっと後の話だ。冬の寒い日に外で吸うのが面倒になったから。
我ながら、なんとも情けない理由だった。
ゆみは、イベントを大切にする人だった。クリスマスだったか、僕の誕生日だったか。彼女は手作りのいちごホールケーキを用意してくれた。
生クリームは少し斜め。イチゴの並べ方も、どこか大雑把。ケーキ屋さんみたいな出来栄えではなかった。
でも、その不器用さが、たまらなく嬉しかった。「ああ、この人、一生懸命作ってくれたんやな。」そう思えた。
完璧じゃないからこそ、忘れられないケーキだった。
ある日、二人で初めてミスチルのコンサートへ行った。普段のゆみは、落ち着いた人だった。大きな声を出すこともない。
ところが、照明が消え、メンバーがステージに現れた瞬間だった。
「キャーーーーーー!!」
僕は思わず横を見た。誰や、この人。それくらい別人だった。歌が始まると、僕のことなんて完全に忘れていた。目はキラキラ。口ずさみながら、ずっと笑っている。
ちょっとだけ嫉妬した。相手は手の届く男じゃない。それでも、「こんな顔もするんやな」と思うと、少し悔しかった。
そんな時間も、今ではいい思い出だ。あの頃、僕は仕事を辞めて無職になった時期があった。将来なんて何も見えなかった。
大阪の夜景を見ながら、
「大丈夫やで。」
ゆみは静かにそう言ってくれた。その言葉だけで、十分だった。……と思っていた。
ところが、一週間後。
「で、まだ働かへんの?」
現実だった。優しいだけじゃない。言うべきことはちゃんと言う。それが、ゆみだった。
甘やかしてくれる人じゃない。でも、ちゃんと支えてくれる人だった。
激しく燃え上がる恋ではなかった。「好き」は100点じゃなかった。たぶん70点くらい。
でも、その70点が一番心地よかった。恋愛なのに、無理をしなくていい。背伸びをしなくていい。一緒にいるだけで安心できる。そんな幸せが、この世にあることを、僕はゆみから教わった。
(下編へ続く)—
💡 今日のまふぇっと教訓
👉 恋愛は、100点を追いかけるより、70点をずっと積み重ねられる相手のほうが幸せになれる。
まふぇっとの更新を応援してくれる方は、下のボタンをポチッとお願いします!
にほんブログ村
この出会いは、お見合いパーティーから始まりました。今は当時より気軽に出会える恋活・婚活サービスも増えています。「新しい出会いが欲しい」そう思った方は、一度チェックしてみてもいいかもしれません。


コメント