【61人目|回想編】「俺、寺を継ぐ?」

恋愛遍歴

関西最後の夜と、やけくその10万円

関東への転勤が決まり、僕は人生の大きな岐路に立たされていた。

会社を辞めて関西に残るのか。それとも、覚悟を決めて関東へ行くのか。

全く知らない土地へ行く不安で、心はかなり重くなっていた。そんな時期だった。

普段はお金をあまり使わない僕だったが、この日はなぜか、やけくそになっていた。

「もういいや。今日は10万円使ってやろう」

自分の中に溜まった不安や鬱憤を、全部吹き飛ばしたかった。

朝から普段なら絶対に使わないようなお金を使い、あちこちを回った。

そして、その日の最後に向かったのが梅田だった。一緒にいたのは、僕が関西で出会った最後の女性。

彼女と僕は、梅田の夜景が一望できる高級焼肉店へ向かった。

煌びやかな街を見下ろしながら、僕はその日一日で約10万円を使った。

焼肉だけで10万円ではない。ただ、その日の最後に食べた焼肉も、普段の僕なら絶対に選ばないような店だった。

「もう、今日はいいや」そんな気分だった。

彼女は豪華な焼肉に目を輝かせながら、僕の愚痴や悩みを嫌な顔ひとつせず聞いてくれた。

僕が関東へ行くこと。仕事をどうするか迷っていること。知らない土地へ行くことが怖いこと。

その日の僕は、彼女にいろんなことを話した。

友達の壁と、「寺を継ぐ」という選択肢

アプリで出会った頃の彼女は、とても可愛らしくて、おしゃれな女性だった。

ただ、初デートの時に、(今、告白しても振られそうだな)と、なんとなく感じた。

さらに、彼女には彼氏がいるような雰囲気もあった。そのせいか、僕は無意識のうちに恋愛感情のスイッチを切ってしまった。

そして彼女を「友達」という安全圏に入れた。

僕には、自分なりのルールがある。一度「友達」だと思ってしまった女性には、そこから恋愛感情を持つことができない。

だから彼女とは、恋愛相談をしたり、電話でくだらない話をしたりするような、気兼ねのない女友達になっていた。

そんな彼女と焼肉を食べていると、突然こんな話をされた。

「実は私、実家のお寺を継いでくれる男性を探してるんだよね」

「へえ」

「私と結婚して、お寺継いでみる?」

僕は笑った。「ははは。そりゃいいね!」完全に友達同士の冗談だと思った。……

でも。その瞬間、僕の頭の中では、とんでもない人生シミュレーションが始まっていた。

(お坊さんってエッチしていいんかな?)

(髪の毛丸坊主やだな)

(関東へ行って苦労するくらいなら……この子と結婚して、千葉でお寺を継ぐ人生もアリなんじゃないか?)

関東へ行くことに不安を感じていたからこそ、その「あり得たかもしれない人生」が、一瞬だけ妙にリアルに感じられた。

関西弁を武器に、次の街へ

その夜、僕は彼女に悩みを聞いてもらった。そして一日で約10万円を使い果たした。

最後まで、僕たちが一線を越えることはなかった。彼女は、僕にとって最後まで「友達」だった。

でも、関西を離れる僕に、彼女は最後にこんな言葉をくれた。

「大丈夫だよ。関東に行ったら、関西弁ってめちゃくちゃモテるから!」

思わず笑った。関東へ行くのが怖くて仕方なかった僕にとって、その言葉は妙に嬉しかった。

(そっか……)

(関西弁ってモテるのか)

(じゃあ、ちょっと行ってみるか)

単純だった。でも、その一言で少しだけ気持ちが軽くなった。

そして僕は、関西を離れ、次の街へ向かう覚悟を決めた。

今のまふぇっとの独り言

男と女として惹かれ合い、付き合って、ベッドインする。それだけが恋愛じゃない。彼女とは、一度「友達」になったからこそ、最後まで一線を越えなかった。

でも、人生の大きな岐路に立っていた僕の話を聞いてくれて、一緒に10万円の散財をしてくれて、お寺を継ぐという「別の人生」まで見せてくれた。

そして最後には、「関西弁はモテるよ」と笑って背中を押してくれた。恋愛相手ではない。かといって、ただの知り合いでもない。

彼女は、僕の関西時代を最後に締めくくってくれた、ちょっと不思議な女友達だった。

そして僕は、その言葉を胸に関東へ向かった。

ここから、僕の「関東編」が始まる。

【今日のまふぇっと教訓】

👉 恋愛だけが、女性との出会いじゃない。人生の岐路で背中を押してくれるのも、女性との大切な出会いだ

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