「三連敗」という悪夢の沼に引きずり込まれるなか、80人目として現れたのは、マッチングアプリで出会った27、8歳の女性だった。
派手さはなく、落ち着いた雰囲気の彼女。ただ、一つだけ並々ならぬ自信を持っていた。「私、手料理にはすごく自信があるんだよね。今度、うちでご飯作ってあげる」
その言葉を聞き、2回目のデートで彼女の部屋へと足を踏み入れた。かつての僕なら「家デート=勝ち確定」と舞い上がっていただろう。
しかし、今の僕は冷酷な「ロボット俺様」。常に冷静に相手を観察し、優位に立つスタンスを崩さない……はずだった。
5区切りのプレートと、すべての「無味」
キッチンから彼女が嬉しそうに運んできたのは、海外のカフェにありそうな、1枚の皿が5つに区切られたお洒落なプレートだった。
肉団子、謎の色をしたご飯、野菜など、5種類の料理が綺麗に並べられている。
期待に満ちた彼女の視線を感じ、僕は一口目を口に運んだ。
「……あ、美味しい」反射的にそう口にした。ところが、次の瞬間――脳内の冷却装置がフリーズした。味が、全くしない。
塩気も、醤油の気配も、出汁の旨味もない。完全なるノーテイスト。
(まさか、最初の一品だけか?)そう思い、2品目、3品目と食べ進めてみた。結果は全滅。肉団子も、色のついたご飯も、野菜も。
5つの区画すべてが、見事なまでに無味だった。僕は思った。
(……これは、料理なのか?)
罪悪感と「調味料サバイバル」
最初に「美味しい」と言ってしまった以上、今さら本音をぶつけるわけにもいかない。
しかし、この無味の物体を無言で完食するのは、なかなかの拷問だった。
いくら冷酷なロボット俺様を気取っていても、自分のために一生懸命作ってくれた彼女の姿を見ると、さすがに申し訳なさが湧いてくる。
(なぜ、ここまで味がしないんだ……?)
そこで僕は、一つの仮説にたどり着いた。(そうか。彼女は極限の健康志向なのかもしれない。
素材の味を最大限に活かす、いわば修行のような料理なのだ)そう自分に言い聞かせたものの、修行を続ける気にはなれなかった。
そこで僕は、ポーカーフェイスを保ちながら、思い切った一手に出た。
「見た目もすごくお洒落で、海外の料理みたいだね。こういうの、食べたことないよ。ありがとう」まずは褒める。
そして、ここからが本題だ。「……あ、でもこれ、醤油とかマヨネーズとかケチャップとかも、すごく合いそうだよね。何か調味料ってあったりする?」
味の評価は避けつつ、調味料の支給を要請する。自信作の料理を前に、調味料を求める男。
相手を圧倒し、華麗にデートを支配するはずだったロボット俺様は、いつの間にか無味の荒野を生き延びるためのサバイバルを繰り広げていた。
こうして、僕の80人目のデートは、圧倒的な無味の違和感と、なんとも言えない気まずさを残して幕を閉じた。
俺様理論を振りかざす男も、料理の前では無力だった。
【今日ののまふぇっと教訓】
どんなに自信があっても、人生には「無味」の落とし穴がある。プライドを守るより、まずは醤油を探せ。ロボット俺様にも、調味料は必要だった。
にほんブログ村
👉️応援してくれる方ポチッとお願いします!
にほんブログ村


コメント