僕の人生のテーマは、ずっとひとつだった。
「ナメられたくない」
会社でも、友人関係でも、そして恋愛でも。黒チェイサーを転がし、低い声で話し、大人の男としての余裕を必死に演じていた。
そんな僕の前に現れた48人目の女性は、大阪に住む24歳の女の子だった。
アニメ声なのに、どこかお姉さんっぽい。守ってあげたくなるのに、なぜか甘えたくもなる。不思議な魅力を持った女性だった。何度かデートを重ね、僕は
「次こそ関係を一歩進めたい」
と考えていた。まだ付き合っていない。だからこそ、彼女の前では絶対にカッコ悪い姿だけは見せたくなかった。
そんなある日のデートだった。何気ない会話の中で、彼女が言った。
「最近、お酒が飲めるようになったんだよね。」
「へぇ、なんで?」
「他でデート行く男の人がお酒好きでさ。一緒に飲み始めたんだ。」
その瞬間だった。胸の奥がザワッとした。他でデートしている男。その男は、僕の知らない彼女を知っている。
もしかしたら僕より先に距離を縮めているのかもしれない。そんな想像が、一瞬で頭を支配した。
負けたくない。ナメられたくない。そんな感情だけが膨らんでいく。僕は平静を装って言った。
「じゃあ今から居酒屋行こうや。」
しかし、この時点で僕は大きな勘違いをしていた。実は僕自身、お酒はほとんど飲めなかった。ビール一杯で顔が真っ赤になるくらい弱かったのである。
居酒屋に入り、注文を決めていると彼女が言った。
「あ、この鍛高譚っていうお酒、一緒に行く男の人がよく飲んでたなぁ。」
また、その男だった。その一言だけで、僕の理性は吹き飛んだ。
「じゃあ俺も鍛高譚にする。」
運ばれてきた四合瓶を飲んでみると、しその香りで驚くほど飲みやすい。
「なんだ、水みたいやん。」
そう思ったのが間違いだった。対抗心だけで、僕はほぼ一本を短時間で飲み干してしまった。
「これくらい余裕やし。」
そう言った数分後。立ち上がった瞬間、世界が傾いた。猛烈な吐き気。視界がぐるぐる回る。
必死にトイレへ駆け込み、個室へ飛び込んだ。頭が自分の意思とは関係なく回り続ける。まるでヘリコプターのプロペラだった。
壁にもたれ、意識が遠のいていく。。。。。。
しばらくして、個室のドアが叩かれた。
「大丈夫ですか?」
店員さんだった。鍵がかかっていたので、個室の上から声かけてきた。
なんとか個室から連れ出してくれたんだが、彼女が心配でトイレまで見に来てくれていた。意識が朦朧とする中、あることを思っていた
(恥ずかしい。。。)
そのまま店の外まで介抱されることになった。
外へ出ると、彼女は嫌な顔ひとつしなかった。
「歩ける?」
そう言いながら僕の肩を支え、駐車場まで付き添ってくれた。歩くたび、ほどけた靴紐がアスファルトをパタパタと擦っていた。
その音だけが、情けない僕を笑っているように聞こえた。
彼女は最後まで僕をチェイサーの助手席まで送り届けてくれた。それが、まだ付き合ってもいない彼女が見せてくれた最後の優しさだった。助手席に倒れ込むように座り、そのまま泥のように眠った。
その日を境に、彼女から連絡が来ることはなかった。僕は他の男に勝とうとしていた。でも、本当に負けた相手は、その男じゃない。
見栄を張り、無理をして、自分ではない自分を演じていた――僕自身だった。
ほどけた靴紐を結び直す気力もないまま、恋は静かに終わった。
(49人目へ続く)
💡今日のまふぇっと教訓
👉 嫉妬は恋を前へ進める力にはならない。無理をして演じた自分が、いちばん先に崩れてしまう
まふぇっとの更新を応援してくれる方は、下のボタンをポチッとお願いします!
にほんブログ村
当時の僕も出会いを探して色々な方法を試していた。今はアプリで出会うのが当たり前の時代になったけれど、結局大事なのは「自分を大きく見せすぎないこと」なのかもしれない。


コメント