【59人目|回想編】風俗嬢に説教した夜

恋愛遍歴

夜の梅田と、直前の衝撃

夜の梅田。マッチングアプリで知り合った女性と、会うことになった。

写真を見る限り、普通に可愛らしい女性だった。ところが、会う直前。彼女から聞かされた話に、僕は少し驚いた。

彼女は、普段から風俗で働いていた。

「えっ……そういう仕事してる人なの?」

正直、戸惑った。でも、ここまで来た以上、会わずに帰るのも違う。

そして実際に会ってみると、やっぱり可愛らしい女性だった。

話しているうちに、僕の中で別の感情が湧いてきた。

「こんなこと、やめればいいのに」

なぜか、そんなことを本気で思った。

「そんなこと、もうやめなよ」

二人で梅田の街を歩きながら、僕は彼女に聞いた。

「なんで、そんな仕事してるの?」

そして、続けた。

「そんなことするくらいなら……俺と付き合おうよ」

今振り返れば、ものすごく青臭い。彼女の人生も、事情も、何も知らない。それなのに僕は、「自分が彼女を救ってやる」そんな気持ちになっていた。

「自分の体を、そんなふうに扱わないほうがいいよ」

「そんな仕事、やめなよ」

「俺だったら、そんなことさせない」

今思えば、完全に説教だった。でも、当時の僕は本気だった。彼女を責めたいわけじゃなかった。

自分の体を大切にしてほしい。もっと普通に幸せになってほしい。そして何より、

「そんな世界じゃなくて、俺を選んでほしい」

そんな気持ちだった。彼女は、そんな僕の言葉を嫌がることもなく聞いていた。

むしろ、少し嬉しそうに笑っていた。その表情を見て、僕はさらに熱くなった。

「もしかしたら、この子を変えられるかもしれない」本気でそう思っていた。

「救いたい」と「受け入れられない」

ところが。熱く話していた僕の頭に、ふと別の考えが浮かんだ。

(……待てよ)

(毎日のように、いろんな男とそういうことをしているんだよな……)

そこで、僕の気持ちが少しずつ冷めていった。「救いたい」そう思っていたはずなのに。

その一方で、「自分が本当にこの人と付き合えるのか?」という現実が、急に重くのしかかってきた。

当時の僕には、彼女の過去や仕事を丸ごと受け入れる覚悟なんてなかった。

むしろ、自分の中にある偏見や拒絶感を消すことすらできなかった。

それなのに、「俺が救ってあげる」なんて思っていた。

今考えると、ずいぶん勝手な話だ。

たった30分で終わった夜

彼女は僕のことを、どう思っていたのだろう。

僕の言葉を本当に嬉しいと思っていたのか。それとも、ただ優しい男に出会ったくらいに思っていたのか。

今となっては分からない。ただ一つ確かなのは、僕自身が、彼女を救えるほど強い男ではなかったということだ。

熱く語ったくせに、自分自身がその現実を受け止められなくなった。

結局、僕たちは梅田の街を少し歩いただけで、別れることになった。

会ってから、わずか30分ほど。

「じゃあ、またね」

そんな感じだったと思う。彼女は夜の街へ戻っていった。僕も一人で帰った。

今なら、少し違って見える

あの頃の僕は、女性をまだよく分かっていなかった。

「救ってあげたい」

「自分を選んでほしい」

そう思うこと自体は、悪いことではないと思う。でも、人を救うというのは、相手の人生を自分の正しさに合わせることじゃない。

その人がなぜそこにいるのか。どんな事情を抱えているのか。本当にそこから抜けたいと思っているのか。

そして、自分はそのすべてを受け入れる覚悟があるのか。そこまで考えたことなんて、当時の僕にはなかった。

ただ、目の前の女性を見て、

「こんな仕事、やめさせたい」と思っただけだった。

そして、そんな自分の中にある矛盾にも、気づいていなかった。

救いたいと思うほど惹かれていたのに、受け入れる覚悟はなかった。

たった30分。熱くなって、説教して、惹かれて、そして冷めた。今振り返ると、あの夜は女性についてというより、

「自分はどこまで人を受け入れられる男なのか」を、初めて突きつけられた夜だったのかもしれない。

【今日のまふぇっと教訓】

👉 「救いたい」と思うことと、「その人を受け入れる」ことは、同じじゃない。当時の僕は、その違いをまだ知らなかった。

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