マッチングアプリで出会った、たぶん30代の年上女性。
顔も雰囲気も、良くも悪くも「普通」。可もなく不可もなく、本当に「普通」という言葉がぴったりな人だった。
当時、僕には彼女もいなかった。車で彼女を迎えに行き、そのままあてもなくドライブをした。
会話が特別盛り上がるわけでもない。彼女から僕への強い好意や、恋愛的な熱を感じるわけでもない。
ただ、普通に話して、普通にドライブしている。当時の僕は、まだ恋愛経験も浅かった。
そして、女性について勝手なイメージを持っていた。
「女性は男性ほど性欲があるわけじゃない」「好きな相手じゃなければ、簡単に一線を越えたりしない」
今思えば、かなり一方的な幻想だった。その日は、(まあ、今日はドライブして終わりかな……)くらいに思っていた。
でも、せっかく会ったのだから、ダメ元で聞いてみることにした。
「……ラブホテル行かない?」
すると彼女は――照れるでもなく。渋るでもなく。驚くでもなく。驚くほどローテンションで、
「いいよ」と、あっさり答えた。
「え?」僕の方が固まった。もっとこう……「えっ……」とか、「どうしよう……」とか、少しくらい何かあると思っていた。
ところが、何もない。あまりにも普通だった。
ホテルに入ってからも、彼女のテンションは変わらなかった。僕のことが特別好きそうにも見えない。
かといって嫌がっているわけでもない。ただ淡々と、その場の流れに身を任せている。
僕の頭の中には、疑問符が大量発生していた。
(えっ……年下の男と、出会った日にラブホテル入るの?)
(しかも、僕のこと別に好きじゃないよね?)
(女性って、こんな感じなの……?)
当時の僕にとっては、かなりの衝撃だった。それまでの僕の中では、「女性=恋愛感情があって、その延長線上に男女の関係がある」というイメージが、どこかにあった。
でも、そうとは限らない。人によっては、「好きだから」でもなく、「付き合いたいから」でもなく、「今日はそういう気分だから」ということもある。
そんな当たり前のことを、僕はこの夜に初めて知った。燃え上がるようなロマンスもない。運命を感じるような出会いでもない。
情熱的な恋愛が始まったわけでもない。ただ、その場のノリと、お互いの欲求。それだけで終わった、ものすごくドライな夜だった。
そして不思議なことに――僕は彼女のことを、ほとんど覚えていない。
名前も曖昧。顔も、今となってははっきり思い出せない。
どんな車で迎えに行ったのか。何を話したのか。細かいことは、もうほとんど残っていない。
それなのに。あの夜に感じた、「ああ、女性って、こんなにドライなこともあるんだ……」という感覚だけは、なぜか残っている。
人間の記憶って不思議なものだ。出来事そのものは忘れてしまっても、そこで感じた衝撃だけが残っていることがある。
だから、この女性は僕の中で、「まったく覚えていないのに、なぜか57人目として残っている女性」になった。
今日のまふぇっと教訓
👉 女性だからといって、必ず恋愛感情が先にあるわけじゃない。人それぞれ、欲望との向き合い方も違う。
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