【67〜76人目|10連敗編・後編】「人生初の不眠と強烈な嫉妬――ゴミとして扱われた男が『ロボット』へ覚醒した夜」

恋愛遍歴

前編の「秒殺即死」。

中編の「3ヶ月の想いが、1日の男に負けて流した涙」。

だが――俺の心を完全に破壊した最後のトドメは、3人目の女性だった。

人生で出会ったことのないレベルの美女

この女性は、それまでの人生で出会った女性とは、明らかに違っていた。

芸能人かと見紛うほどの、健康的なスタイルをしたハーフ美女。

田舎で育ち、これまで派手なヤンキー系の女性くらいしか知らなかった俺にとって、その女性と居酒屋で向かい合っていること自体が、ちょっとした事件だった。

(こんな人、本当にいるんだ……)

(しかも今、俺の目の前にいる……)

それくらい衝撃的な女性だった。だからこそ――俺は、この女性をなんとか振り向かせたかった。

彼女は、ちょうど彼氏に振られたばかりだった。そして、その日の2時間。彼女はずっと元カレの話をしていた。

ほとんど笑わなかった。俺は必死だった。少しでも彼女の気持ちをこちらに向けたかった。

だから、自分の気持ちは全部押し殺して、ひたすら彼女に合わせた。

「ああ、すごい彼氏だったんだね」

「大変だったね」

「それは辛かったね」

元カレのことを褒める。

彼女の気持ちに共感する。

話を否定しない。

とにかく、彼女の話を聞き続けた。

でも――2時間経っても、彼女は一度も俺を見て笑ってくれなかった。

俺は、彼女の心の中に入ることができなかった。そして、そんな俺に追い打ちをかけたのが――彼女が見せてくれた、元カレの写真だった。

「……なんで、俺じゃないんだ?」

写真に写っていた男は、普通の男だった。少なくとも、俺とは別世界のイケメンには見えなかった。

俺と大して変わらない。その瞬間、俺の頭の中に、いくつもの疑問が浮かんだ。

(……なぜだ?)

(外見が、そこまで離れているわけじゃない)

(だったら、俺にも手が届くはずじゃないのか?)

(なのに、なんで俺は2時間かけても、この人を一度も笑わせることすらできないんだ……?)

そして、次第にその疑問は、別の感情に変わっていった。嫉妬だった。特に頭から離れなかったのは、あの元カレだった。

俺と大して変わらない外見の男。なのに、その男は彼女と付き合い、彼女に愛されていた。

しかも、彼女は今でもその男のことを引きずっている。俺が2時間かけても一度も笑わせられなかった女性が、その男の話をするだけで、あれだけ感情を動かされている。

(なんで、こいつなんだよ)

(俺と何が違うんだ?)

(顔か?)

(会話か?)

(女慣れしているのか?)

(こいつは一体、彼女に何をしたんだ?)

会ったことすらない男なのに、俺は勝手にそいつを「絶対に勝てない男」にしていた。

そして――猛烈に悔しかった。彼女を奪いたい。その男より上に行きたい。

「俺の方がいい男だ」と証明したい。そんな醜い感情まで出てきた。でも、現実はどうだったか。

俺は、その女性を一度も笑わせることすらできなかった。その事実が、何より悔しかった。

人生初の不眠

その日の夜。

家に帰ってベッドに入った。でも、眠れなかった。目を閉じても、頭の中に彼女の顔が浮かぶ。

元カレの写真が浮かぶ。横浜で出会った女性たちが浮かぶ。

そして、女性の心を掴んでいるように見える男たちのことを考えてしまう。

(なんで、俺じゃないんだ)

(俺だって、もっとできるはずだろ)

何度考えても答えが出ない。気がつけば朝になっていた。

人生で初めて、一睡もできなかった。でも、本当に苦しかったのは――この女性一人に振られたことではなかった。

俺はこの時点で、10人連続で振られていた。

「俺、ゴミとして扱われてる……」

10人。その一人一人に対して、俺はずっと同じようなことをしていた。

相手に合わせる。

嫌われないようにする。

優しくする。

話を聞く。

励ます。

相手の気持ちを優先する。

「いい人」でいようとする。それなのに――俺自身は、恋愛の相手として見てもらえていなかった。

彼女たちの視界に、俺はいなかった。俺の気持ちなんて、優先順位の最下層。

俺が傷つこうが、悔しがろうが、眠れなくなろうが――そんなことは、相手には関係ない。

ただ、都合よく話を聞いてくれる男。ただ、優しくしてくれる男。

そんな存在として、俺は消費されているように感じた。そして――俺、ゴミとして扱われてる……。そう思った。

そうやって、全部自分のせいにしていた。でも、この時だけは違った。

(……俺、結構頑張ってきたよな)

(なんで俺ばっかり、こんな思いしなきゃいけないんだろう)

そして、頭の中から、変な声が聞こえてきた。

「俺だけは、自分の味方でいてやろう」なんか、笑える話だ。30年近く生きてきて、初めて自分自身を本気で可哀想だと思った。

そして同時に――「だったら、俺くらいは俺の味方でいてやろう」そう思った。

それまで俺は、ずっと他人に嫌われないように生きてきた。でも、もういい。嫌われてもいい。

誰かに否定されてもいい。少なくとも――俺だけは、俺を見捨てない。

その感覚が、俺の中で何かを変え始めていた。

「俺の人生って、何だったんだ?」

そして、もう一つの感情が湧いてきた。(俺が今まで生きてきた30年近くの人生って、何だったんだ……?)

これまでの生き方。

優しさ。

誠意。

「相手に嫌われないように」と気を遣って生きてきたこと。俺は、それなりに必死に生きてきたつもりだった。

なのに――その人生そのものを、真っ向から否定されたような気がした。

嫌われないようにする。

相手に合わせる。

優しくする。

相手の気持ちを優先する。そんなふうに生きてきた俺のやり方は――結局、誰にも選ばれないための生き方だったのか?

(俺が今まで必死にやってきたことは、何だったんだ……?)

悔しかった。猛烈に悔しかった。

そして、決めた。

「もう、今までと同じことをするのはやめよう」

不眠の夜が明けた。朝になった時。俺の中で、何かが「パチン」と音を立てて弾けた。

「もう、今までと同じことをするのはやめよう」俺の人生そのものが間違っていたように感じたなら

――だったら、今までの俺を一度壊してしまえばいい。

嫌われないように相手に合わせる。好かれようとして、自分を抑える。

そんな「いい人」のやり方を、俺はやめることにした。

これからは、自分の気持ちを優先する。自分が何をしたいのかを考える。

嫌われてもいい。相手にどう思われてもいい。とにかく、自分を守る。

そうやって俺は――少しずつ、今までとは違う人間になっていった。

ロボット・マフェットの誕生

今までの俺は、女性に嫌われることを極端に恐れていた。

だから、相手に合わせた。優しくした。我慢した。

でも、もうやめた。期待しない。傷つかない。嫌われてもいい。

そして――自分の欲求を優先する。まるで、ロボットだった。

もちろん、今振り返れば、それが正解だったとは思わない。

優しさを捨てれば恋愛が上手くなるわけでもない。冷たくなれば魅力が増すわけでもない。

ただ、当時の俺には――それしか自分を守る方法が思いつかなかった。

かつての軟らかく、優しかったマフェットは、一度死んだ。情を捨てる。期待しない。嫌われてもいい。

そして――「ロボット・マフェット」へ。横浜で10人連続で振られた結果、俺の恋愛はここから大きく変わっていく。

横浜の夜が生み落としたのは――感情を捨て、自分のルールで突き進もうとした「新・マフェット」だった。

【今日のリベンジマフェットの教訓】

👉️好かれようとして自分を殺し続けると、いつか自分が何をしたいのか分からなくなる。あの頃の俺は、「嫌われてもいい」と思うことで、ようやく自分を取り戻そうとした。それが正しかったのかは、これからの物語で分かっていく。

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