1人目のハマッ子美女に、駅の改札前で「秒で表情フリーズ」を決め込まれ、外見一発で即死させられた俺。
あれだけの惨劇を味わいながらも、俺はまだ「優しくて、心の柔らかい男」のままだった。
「今度の人は、きっと違うはずだ」そう自分に言い聞かせながら、次の女性に向き合っていた。
それが、2人目のハマッ子美女だった。彼女はマッチングアプリで出会った、スラッとした可愛らしい雰囲気のシングルマザー。
元カレを引きずりながらも、現実の辛さから少し逃げ出したい。そんな儚さを感じさせる女性だった。
彼女とは、実際に会うまでにアプリで2ヶ月間、じっくりとやり取りを重ねた。
その間、彼女からは嬉しい言葉を何度ももらった。
「話がすごく合う」
「私のこと、よく分かってくれるよね」
そして――「ねえ、早く私の彼氏になってよ」さらには、「もう元カレの次なら、誰でもいいと思ってる」なんてことまで言っていた。
ん?なんか……このパターン、前にも聞いたことがあるような……。いや、気のせいか。
俺は完全に舞い上がった。
(これは勝ったな)
(今度こそ、付き合える)そう思っていた。
そして迎えた、1回目のデート。横浜で待ち合わせた彼女は、実際に会ってみても可愛らしく、スタイルもよかった。
店での雰囲気も悪くない。彼女は優しく俺の話を聞いてくれて、終始いい空気を作ってくれていた。
前編の女性のような、会った瞬間の冷酷な拒絶もない。
「ついに横浜で報われるかもしれない」俺は、そんな淡い期待を抱いていた。
それから、さらに1ヶ月。毎日毎日、俺は彼女のことを考えていた。
出会うまでの2ヶ月。そして、1回目のデートからの1ヶ月。合計3ヶ月間。
俺は彼女に対して、愚直なまでに想いを積み上げていた。
そして迎えた、2回目のデート。指定された場所は――2人きりのカラオケボックスだった。
(密室なら、もっと距離が縮まるかもしれない……)そんな甘い期待を胸に、俺は部屋のドアを閉めた。
しかし、ソファーに腰掛けた瞬間。俺の観察癖が、妙な違和感を捉えた。
彼女は俺との間に、自分のカバンをポツンと置いた。俺と彼女の間に、妙に遠い物理的距離。
その真ん中に置かれたカバン。まるで、そこに「これ以上近づくな」という見えない壁があるようだった。
(……かなり抵抗されてるな)
嫌な予感が、じわじわと胸を締め付けてきた。だが――本当の地獄は、カバンの壁どころではなかった。
カラオケの合間。楽しげに会話をしていたはずの彼女が、ふと何気ない感じで口を開いた。
「昨日会った男の人、ちょっと好きになっちゃったんだよね」
…………。頭の中が、真っ白になった。目の前にいる俺を、完全に「友達」として扱った恋バナ。
そして、さらに彼女の口から出てきたのは、その男と車の中で何をしたのかという、生々しい話だった。
「昨日会ったばかりなのに、また次会うのが楽しみなんだ」その瞬間。胸の奥を、思い切り殴られたような感覚がした。
付き合っているわけではない。もちろん、俺に彼女を責める権利なんて一切ない。
そんなことは、俺自身も分かっていた。だから俺は、必死に平静を装った。
言葉を失って固まりそうになるのをこらえながら、「そうなんだ」みたいな顔をして、彼女の話を聞いているフリをした。
でも――心の中では、ずっと叫んでいた。
(俺が3ヶ月かけて積み上げてきたものは、一体なんだったんだ……?)
俺は勝手に「いい感じ」だと思っていた。俺は勝手に「もう少しで付き合える」と思っていた。
でも、彼女の中では、そんな関係にはなっていなかった。その現実を、俺はカラオケボックスの中で突きつけられた。
カラオケを出て、彼女と別れた。そして一人になった帰り道。車の中で、悔しくて、情けなくて――気づいたら、涙がボロボロと溢れていた。
横浜に来てから、初めて流した涙だった。
(俺が過ごした、あの3ヶ月は一体何だったんだ……?)
自分には男としての魅力がない。自分はみすぼらしい。そんな現実を、これでもかというほど突きつけられた気がした。
前編では、「優しく包み込もうとした男」が、会った瞬間に外見で即死した。
そして今回は、「時間をかけて誠実に向き合った男」が、1日前に出会った男の話を聞かされて撃沈した。
俺の中で、何かが少しずつ壊れていった。横浜の街は、俺の「人間らしい心」を容赦なく削り取っていく。
この時の俺は、まだ知らなかった。この10連敗の先で、俺自身が「優しさ」や「情」を捨てようとしてしまうことを。
そして、自分を守るために――「冷酷なロボット」へと変わっていくことを。
【今日のまふぇっとの教訓】
👉️3ヶ月かけて「いい感じ」だと思っていたのに、相手の中では、まだ何も始まっていなかった。恋愛の手応えほど、信用できないものはない。
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