夜の梅田と、直前の衝撃
夜の梅田。マッチングアプリで知り合った女性と、会うことになった。
写真を見る限り、普通に可愛らしい女性だった。ところが、会う直前。彼女から聞かされた話に、僕は少し驚いた。
彼女は、普段から風俗で働いていた。
「えっ……そういう仕事してる人なの?」
正直、戸惑った。でも、ここまで来た以上、会わずに帰るのも違う。
そして実際に会ってみると、やっぱり可愛らしい女性だった。
話しているうちに、僕の中で別の感情が湧いてきた。
「こんなこと、やめればいいのに」
なぜか、そんなことを本気で思った。
「そんなこと、もうやめなよ」
二人で梅田の街を歩きながら、僕は彼女に聞いた。
「なんで、そんな仕事してるの?」
そして、続けた。
「そんなことするくらいなら……俺と付き合おうよ」
今振り返れば、ものすごく青臭い。彼女の人生も、事情も、何も知らない。それなのに僕は、「自分が彼女を救ってやる」そんな気持ちになっていた。
「自分の体を、そんなふうに扱わないほうがいいよ」
「そんな仕事、やめなよ」
「俺だったら、そんなことさせない」
今思えば、完全に説教だった。でも、当時の僕は本気だった。彼女を責めたいわけじゃなかった。
自分の体を大切にしてほしい。もっと普通に幸せになってほしい。そして何より、
「そんな世界じゃなくて、俺を選んでほしい」
そんな気持ちだった。彼女は、そんな僕の言葉を嫌がることもなく聞いていた。
むしろ、少し嬉しそうに笑っていた。その表情を見て、僕はさらに熱くなった。
「もしかしたら、この子を変えられるかもしれない」本気でそう思っていた。
「救いたい」と「受け入れられない」
ところが。熱く話していた僕の頭に、ふと別の考えが浮かんだ。
(……待てよ)
(毎日のように、いろんな男とそういうことをしているんだよな……)
そこで、僕の気持ちが少しずつ冷めていった。「救いたい」そう思っていたはずなのに。
その一方で、「自分が本当にこの人と付き合えるのか?」という現実が、急に重くのしかかってきた。
当時の僕には、彼女の過去や仕事を丸ごと受け入れる覚悟なんてなかった。
むしろ、自分の中にある偏見や拒絶感を消すことすらできなかった。
それなのに、「俺が救ってあげる」なんて思っていた。
今考えると、ずいぶん勝手な話だ。
たった30分で終わった夜
彼女は僕のことを、どう思っていたのだろう。
僕の言葉を本当に嬉しいと思っていたのか。それとも、ただ優しい男に出会ったくらいに思っていたのか。
今となっては分からない。ただ一つ確かなのは、僕自身が、彼女を救えるほど強い男ではなかったということだ。
熱く語ったくせに、自分自身がその現実を受け止められなくなった。
結局、僕たちは梅田の街を少し歩いただけで、別れることになった。
会ってから、わずか30分ほど。
「じゃあ、またね」
そんな感じだったと思う。彼女は夜の街へ戻っていった。僕も一人で帰った。
今なら、少し違って見える
あの頃の僕は、女性をまだよく分かっていなかった。
「救ってあげたい」
「自分を選んでほしい」
そう思うこと自体は、悪いことではないと思う。でも、人を救うというのは、相手の人生を自分の正しさに合わせることじゃない。
その人がなぜそこにいるのか。どんな事情を抱えているのか。本当にそこから抜けたいと思っているのか。
そして、自分はそのすべてを受け入れる覚悟があるのか。そこまで考えたことなんて、当時の僕にはなかった。
ただ、目の前の女性を見て、
「こんな仕事、やめさせたい」と思っただけだった。
そして、そんな自分の中にある矛盾にも、気づいていなかった。
救いたいと思うほど惹かれていたのに、受け入れる覚悟はなかった。
たった30分。熱くなって、説教して、惹かれて、そして冷めた。今振り返ると、あの夜は女性についてというより、
「自分はどこまで人を受け入れられる男なのか」を、初めて突きつけられた夜だったのかもしれない。
【今日のまふぇっと教訓】
👉 「救いたい」と思うことと、「その人を受け入れる」ことは、同じじゃない。当時の僕は、その違いをまだ知らなかった。


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