【11人目|恋愛タイプ】「ムツゴロウ王国へ行くの」——何もできなかった恋

ナンパ同盟


不夜城の中で、彼女は少しだけ浮いていた。黒いワンピースに、長い髪。
整っているのに、どこか近寄りがたい空気。


いつもの“狙える相手”とは、明らかに違った。イケチャンもジョージも、興味を示さなかった。


「派手すぎる」「ああいうの無理」


だからこそ、僕だけが近づけた。
話してみて、すぐに違和感に気づいた。


見た目は大人びていて、遊んでいそうにも見えるのに、話してみると、どこか無邪気で、妙に真面目だった。21歳。まふぇっとより年下だった。


その“ズレ”が、やけに心地よかった。
同じ場所にいるのに、見ている世界が違う。
それが、たまらなく魅力的だった。


「私、ムツゴロウ王国へ行きたいんだ」


不意にこぼれた一言。
冗談みたいなのに、なぜか本気に聞こえた。見た目と中身が、まるで噛み合っていない。


でも、そのちぐはぐさに、完全に引き込まれていた。今までのまふぇっとなら、迷わなかった。

「会おうよ」「次いつ空いてる?」

そうやって距離を詰めてきた。
でも、彼女にはそれができなかった。
壊したくなかった。この距離を。


気づけば、ただのやり取りなのに、やけに心が動いていた。


会うこともなく、触れることもなく、
ただ、メッセージだけが続いていく。

それでもどこかで思っていた。


「これは、特別なんじゃないか」って。
終わりは、あっけなかった。


「私、やっぱり行くと思う。ムツゴロウ王国」


あの時と同じ、少し浮いた言葉。
そのあと、連絡は途絶えた。
嘘だったのか、本気だったのか。
今でも分からない。


ただ一つ分かるのは、
僕は、何もできなかったということだけだ。


イケチャンとジョージは、変わらなかった。
いつも通り、次の女を探していた。
「行くぞ」
そう言われても、足が動かなかった。


あの時、初めて思った。「今までみたいには、できないと思った」
ナンパ同盟の終わりの始まりだった…


💡今日のまふぇっと教訓
「本気になるほど、人は動けなくなる」

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