大学生の頃。
いつもの“地元の不夜城”では結果が出ない俺たちは、ある日、少しだけ背伸びをした。
「……地元を飛び出して都会、行ってみる?」軽いノリだった。でも内心は全員同じだったと思う。
「本物の美女と戦ってみたい」向かった先は、人で溢れる大きな橋の上。ネオン、笑い声、ひっきりなしに行き交う人の波。
そして——明らかに“慣れてる男たち”。サラッと声をかけて、サラッと笑わせて、サラッと去っていく。
俺たちは、その光景を見て悟った。「ここ、レベル違うな」それでも来た以上、やるしかない。
「あの2人いく?」
「いや無理だろ」
「じゃああっち?」
「タイプじゃない」
——気づけば1時間。橋の端で、男3人がコソコソ会議しているだけだった。当然、その間に“ターゲット”は全部いなくなる。
何もしてないのに、疲れていく。終電の時間も近づいてきた頃。誰かが言った。
「……最後、行くか」
半分ヤケクソだった。目の前にいたのは、今日見てきた中で一番レベルの高い2人組。
普段の俺たちなら、絶対に避ける相手。でも、その日は違った。 どうせ最後なら、負けてもいい
「なにしてるの?」
「よかったら遊ばない?」
震えながら、声をかけた。無視されると思っていた。でも——
「カラオケならいいよ?」
一人が、軽くそう言った。もう一人も、コクリと頷く。
……え?俺たちは、その場で固まった。嬉しさは、なかった。代わりに出てきたのは—— 恐怖と疑いだった。
「ちょっと待って」気づけば3人で、少し離れて円陣を組んでいた。
「これ、おかしくない?」
「いや、普通こんな簡単にOK出る?」「絶対なんかあるって」
「美人局とかじゃない?」
「いやいや、俺らだぞ?」
「そんな価値ある?」
「……ない」
その瞬間、変な確信が生まれた。 「これは罠だ」ふと、彼女たちを見る。髪も、服も、全部ちゃんとしてる。
立ってるだけで、周りの視線を集めるタイプ。それに対して俺たちは——さっきまで橋の端で、1時間会議してた3人。
勝てるわけがない気づいたら、俺たちの中で結論は出ていた。
「あ、あの……」
なぜか、俺たちの方が気まずそうに声をかける。
「やっぱり……今日はいいです」
「え?」
一瞬、彼女たちの表情が止まる。その隙を逃さず——俺たちは、逃げた。
背中に何か言われた気がした。でも誰も振り返らなかった。そのまま3人で、無言で駅に向かう。さっきまであんなに騒がしかった街が、やけに静かに感じた。
人生で初めて、“成功”を自分から捨てた夜だった。
💡 今日のまふぇっと教訓「モテない男は、チャンスが来ても“自分には無理だ”と判断して逃げる。」


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