【再会編|37人目】1軍女子の「形相」と、車内に響くツボの音

同窓会

同窓会のあとだった。

1人目―― 3秒で僕を振った初恋の女性との再会を、どこか冷めた気持ちで終えたあと。次に現れたのは、 高校時代“トップグループ”にいた女だった。

明るい。 派手。 陽キャ。 クラスの中心。当時の僕とは、 住む世界が違った。僕なんて5軍か6軍。 いや、たぶんそれ以下。教室の空気みたいな存在だった。

そんな彼女が、 ニコニコしながら近づいてきた。「まふぇっと君、めっちゃ変わったね!」その瞬間、 正直ちょっと浮かれた。

ナンパ同盟で磨いた会話力。 場数。 言葉の武器。それを手に入れた今なら――

「昔は無理だった“1軍の女”にも通用するのか?」そんな勘違いをしてしまった。

今思えば、 あの時の僕は“モテた”んじゃない。ただ、「昔、見向きもしなかった女が笑ってくれた」それだけで舞い上がってた。

密室のドライブと、くだらない期待

同窓会のあと、 流れで彼女を車で送ることになった。深夜。 二人きりの車内。

かつて高嶺の花だった女が、 助手席に座っている。それだけで、 男の脳は都合よく暴走する。

「これ、あるんじゃないか?」

「もしかして……」

今思い返しても、 かなり気持ち悪いテンションだったと思う。僕は調子に乗って、 ナンパで覚えたトークを披露していた。

彼女はずっと笑っていた。興味ありそうに。 楽しそうに。 テンポよく。

でも。あれは“会話”じゃなかった。今なら分かる。あれは接客だった。

0.1秒だけ見えた「本音」

運転中。僕は彼女の反応を確かめたくなった。いや、 確かめるというより――「いける」という幻想を、 確認したかったんだと思う。

信号待ちの時、 そっと彼女の手に触れようとした。その瞬間だった。彼女の顔が、 一瞬だけ崩れた。

「……ッ」声には出さない。

でも、 表情だけは隠せなかった。怒り。 嫌悪。 警戒。さっきまでの笑顔が、 0.1秒だけ完全に消えた。

そして次の瞬間には、 また元の“感じのいい女”に戻る。

(……気のせいか?)

そう思って、 僕はバカみたいに何回か試した。でも結果は全部同じだった。触れようとした瞬間だけ、 彼女は“汚いものを見る目”になる。そしてまた、 営業スマイルに戻る。その繰り返しだった。

「壺」という名の終着点

その時、 やっと理解した。彼女にとって僕は、 “男”じゃない。昔と同じ。「話しやすくて、使いやすい下層男子」それだけだった。

そして、 空気が完全に見えたタイミングで、 彼女は言った。

「そういえばさ〜」

「ご利益ある壺あるんだけど、興味ない?」

……壺。本当に壺売る人いるんだ?しかもこの流れで?一瞬で冷めた。高校時代、 1軍だった女が。嫌悪感を隠しながら、 5軍の男に壺を売ろうとしている。

その光景が、 なんだか滑稽すぎた。さらば、偽りの女神

「……ああ、ごめん。興味ないわ」

そこから先、 車内でほとんど会話はなかった。彼女を家まで送り、 最後の挨拶もそこそこにアクセルを踏む。夜道を走りながら思った。

結局、 人の“第一印象”や“序列”って、 簡単には更新されない。どれだけ経験しても。 どれだけ言葉を磨いても。あの頃の教室を知ってる人間の中では、 自分はずっと“あの時の自分”のままなんだ。

でも。それでいいと思った。昔なら、 1軍女子に笑われるだけで舞い上がってた。でも今は違う。相手の正体を見て、 「しょうもな」って冷められる。その時初めて、 僕は少しだけ、 高校時代の自分を卒業できた気がした。

💡 今日のまふぇっと教訓

👉 人は、興味のない相手に触れられた瞬間、一瞬だけ“本音の顔”が出る。

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