恋愛遍歴三連敗の最後を締めくくることになった81人目は、マッチングアプリで出会った26歳、身長155cmの女性だった。
小柄で可愛らしい雰囲気。そして何より、ショートパンツに黒ストッキングという、僕の好みを完璧に撃ち抜くビジュアル。
この頃の僕は「ロボット俺様」を貫いていたはずなのに、彼女を前にすると、すっかりペースを乱されていた。
彼女の住む横浜北部まで車で片道1時間かけて迎えに行き、そこから下道で2時間以上かけてお台場へ向かう。
今思えば、気合が空回りした耐久レースの始まりだった。
黄金パターンの崩壊
お台場に到着し、食事を済ませて夜景スポットへ。僕の頭の中には、これまで何度も成功してきた「ロボットマフェットの王道勝利パターン」が描かれていた。
手をつなぐ → 告白 → ハグ → キスこの流れでいけば、今日も勝てる。そう信じて疑わなかった。
意を決して、彼女に尋ねた。「手、つないでいい?」彼女は拒否することなく、すんなりと手を握り返してくれた。
――幸せマックス。胸の鼓動が高鳴る。(よし、これはいける。勝率99%だ。このまま告白まで一気に仕留める!)
脳内では、すでに勝利のファンファーレが鳴り響いていた。
そして買い物を終え、駐車場に戻った車内。僕は渾身の想いを口にした。
「……付き合ってくれない?」ド直球の告白。しかし、返ってきたのは、あまりにもあっさりした一撃だった。
「……タイプじゃない」――フリーズ。脳内の計算機が爆発し、すべての処理が停止した。
(え……?)
(手をつなぐのは拒否してくれよ……!)
(タイプじゃないなら、最初から手なんてつながないでくれよ……!)
もちろん、手をつなぐことと交際したい気持ちは別物だ。今ならわかる。
だが、そのときの僕には、そんな冷静な分析をする余裕などなかった。勝率99%だと思っていた男は、秒殺された。
脳内葛藤と、地獄の下道2時間ドライブ
振られた瞬間、僕の中に搭載された「ロボット俺様」の防衛本能が緊急作動した。
さっきまであれほど好きだった相手への興味が、一瞬で冷め切ったのだ。
振られた途端、相手がどうでもよくなる。まるでスイッチを切ったかのように、感情が「無」になる。
しかし、ここからが本当の地獄だった。興味がゼロになった相手を助手席に乗せたまま、下道で2時間以上かけて横浜まで送り届けなければならない。
車内を猛烈な気まずさが支配する。その中で、僕の脳内では三つの感情が激しくぶつかり合っていた。
(振られたからって黙りこくったら、男としてカッコ悪いよな……。最後まで盛り上げて送るのが、男のプライドだろ)人としての理性。
(いや、でも会話のネタなんて一つも浮かばない。もう興味なんてねぇんだよ……)完全な虚無。
そして――(俺様を振るなんて、調子乗るなよ! そもそも俺だって、最初からお前に興味なんてなかったし!)猛烈な怒りと、傷ついたプライド。
いや、最初から興味がなかったわけがない。片道1時間かけて迎えに行き、さらにお台場まで連れてきて、手をつないだだけで勝率99%だと浮かれていた男である。
どう考えても、興味津々だった。それでも、傷ついたプライドを守るために、そんな自分を必死に否定していた。
「最後まで大人の対応をしなければ」という理性と、「もうどうでもいい」という虚無と、「俺様を振りやがって」という怒り。
この三つを抱えながら、僕は必死に会話をつなぎ、彼女を送り届けた。そして、ついに彼女の家の前に到着した。
解放のシャウトと狂乱のコンビニ
「じゃあね」彼女が車を降り、ドアが閉まった。その瞬間――。圧倒的な解放感。終わった。
ようやく終わった。僕はそのままコンビニへ駆け込んだ。
普段なら控えているような脂っこいホットスナックや、甘いスイーツを次々と購入。
いわゆる、やけ食いである。買い込んだ食べ物を持って車に戻り、お気に入りの音楽を爆音で流した。
そして、ジャンクフードを貪りながら、夜の車内で叫んだ。
「ふざけるなー!!!笑」幸せマックスからの、秒殺。そして、地獄の下道ドライブを経て、深夜のシャウト。
手をつないだ瞬間には、今日も勝ったと思っていた。ところが、現実は三連敗。「ロボット俺様」の完璧な勝利パターンは崩れ去り、内側に押し込めていた感情が、ついに大爆発を起こした。
こうして、三連敗の暗黒期は、あまりにも情けなく、そして最高に人間くさいフィナーレを迎えたのだった。
【今日のマフェット教訓】
「手をつなげた」くらいで勝ちを確信するな。恋愛に必勝パターンなんてない。そして、男の本性は振られた後の一人の車内で現れる。笑
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